【映画レビュー】麦の穂をゆらす風
愛国者達の血塗られた歴史
評価★★★★☆
今回見たのは、「麦の穂をゆらす風」。
2006年のアイルランド・イギリス合作映画。
パルムドール受賞作。
今日の北アイルランド問題の発端となった、アイルランド独立戦争・アイルランド内戦を描きながら、同じアイルランド独立を目指す兄弟が思想の違いから対立して行く様を描きます。
イギリスの正式名称は、「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」。
日本語に訳すと、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」となります。
学校の歴史で耳にしたことがあると思いますが、北アイルランドってなんだろう?って思いませんでしたか?
イギリスはイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドで構成されていますが、なぜアイルランド全てではなく「北アイルランド」なのか?
アイルランドは1900年代初頭までイギリスの実質的な統治下にありましたが、独立を願う義勇軍によってアイルランド独立戦争がイギリスとの間で勃発します。
戦争後、英愛条約によって休戦が訪れますが、この内容を巡ってアイルランド内で対立が起き、アイルランド内戦へと発展していきます。
物語はそのアイルランド内戦の途中で終わります。
同じ志を持っていた兄弟はいつしか運命によって引き裂かれ対立し、ラストへ。
とても胸が痛い作品です。
確かに、日本人にとってアイルランドをめぐる諸問題は理解に困難な部分があります。
アイルランドとイギリスの長い歴史から起こる民族思想や宗教的な観点から起こる対立は理解し難いです。
それでも同じ愛国者達の感情がこんなにあっさりと分裂し傷つけ合う姿は酷く虚無感を生み出します。
さらにスコットランドの美しい大地と対比したその姿が、更に悲壮感を生む作品でした。
こういう作品は言葉にするのが難しい…